歯髄幹細胞および歯根膜幹細胞のin vivoでの組織再生に対する、in vitroにおいての骨芽細胞分化誘導の影響について

Effects of In Vitro Osteogenic Induction on In Vivo Tissue Regeneration by Dental Pulp and Periodontal Ligament Stem Cells.

J Endod. 2015 Sep;41(9):1462-8.

Cha Y et al., Yonsei University, Korea.

 

本研究の目的は、in vitroでの骨芽細胞/セメント芽細胞分化の歯髄幹細胞(DPSCs)および歯根膜幹細胞(PDLSCs)のin vivoにおける組織再生への影響を検討することであった。DPSCsとPDLSCsは骨芽細胞分化/セメント芽細胞分化培地で0、4、8日間、前分化誘導され、免疫不全マウスの皮下ポケット内へ移植された。移植体は移植後9週で回収し、in vivoで形成された新生組織の性質をアルカリフォスファターゼ活性、osteocalcin, dentin sialoprotein, 12型コラーゲンの組織染色、および定量PCR法を用いた以下の遺伝子発現パターンの解析によって行った(Runx2, OC, DMP1, DPP, POSTN, CP23, COL12)。DPSCの移植体では、新生組織量はすべての群で同等であったが、OCおよびDSPPの遺伝子発現が前分化を行った群で分化を行わなかった群に比べて高かった。前分化を行ったPDLSCsの移植体は、前分化なしの群より多くの硬組織を形成しており、アルカリフォスファターゼ活性も高かった。特に、8日間の前分化誘導を行ったPDLSCs移植体はin vivoにおいてセメント質/歯根膜複合体に近い組織を形成し、これはPOSTN、CP23、COL12の高発現によって確認された。DPSCsでは前分化によって組織形成能に有意な増加はなかったが、前分化したDPSCsは象牙質に類似した硬組織を形成した。また、前分化したPDLSCsは分化しなかったPDLSCsと比較して、量的にも質的にも高い組織再生能を有するようである。

 

幹細胞を移植して組織再生したい場合、移植前の分化誘導は必要かどうかを検討した研究。免疫不全マウスの背部にCaPと幹細胞を混ぜて移植すると、それだけでCaPの表面には基本的には骨ができる。それが骨なのか、セメントなのか、象牙質なのか。以前から、PDLSCはセメント質、セメント/歯根膜様組織を作り、BMMSCは骨、骨髄様組織を、DPSCsは象牙質と歯髄を作るといわれてきたが、本当だろうか?(Seo BM et al., Lancet. 2004 ,364:149-55) (Gronthos S et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2000,97:13625-30.)(Batouli S et al., J Dent Res 82:976-981)。組織幹細胞の性質を反映するこの結果はリーズナブルだが、組織像としてそこまで明瞭に区別できるのだろうか。これは自分で行って感触を得るしかない。前分化誘導というのが、結局はin vitroでの骨芽細胞分化誘導、つまり石灰化誘導(b-GP, AA, Dex)なのでこれをBM-MSCの場合、骨芽細胞分化、PDLSCの場合セメント芽細胞分化、DPSCの場合象牙芽細胞分化と呼ぶのは違和感がある。しかしセメント芽細胞分化誘導、あるいは象牙芽細胞分化誘導因子というのはまだ知られていない。ここのところをしっかり解明しなければ歯周組織再生の分子メカニズムと言っても肝心なところに手が届かない。結局のところセメント芽細胞って何よ?どうやって誘導するの?骨芽細胞と違うの?という問いに未だきちんと答えていないという問題。それから異所性の再生と口腔内局所の再生とではずいぶんと場の環境が異なるのはどうとらえるのか。この実験系は、単に細胞の機能分析のツールということか。