骨削除後の治癒およびインプラントのオステオインテグレーションにおけるPDLの役割

Contribution of the PDL to Osteotomy Repair and Implant Osseointegration

Journal of Dental Research 2017, Vol. 96(8) 909–916

Pei et al, Sichuan University, Chengdu, China

 

本研究の目的は抜歯後にソケット内に残存した歯根膜(PDL)のその後を明らかとし、このPDLが即時埋入インプラントのオステオインテグレーション形成に役割を果たすかどうかを検討することである。マウスの上顎第一臼歯を抜歯し、PDLの残存を骨削除によって除去しチタンインプラントを埋入した。骨削除は口蓋側の面のPDLを完全に除去するように、そして頬側・近心・遠心側はPDL線維束が残るように行った。術後の様々な時間帯において、一連の分子・細胞・組織形態計測を用いて組織を評価した。我々は残存PDLが、抜歯窩内で石灰化し直接、骨形成に関与することを観察した。骨削除によってPDLを除いた抜歯部位と比較してPDL線維を残した部位では、より多くの骨が形成された。即時インプラントでは残存PDLが直接的に新生骨・オステオインテグレーションの形成に関与していた。これらより、PDLは本質的には骨形成性であり、この組織が健全であれば即時インプラントの埋入前に抜歯窩の掻把は避けるべきである。これは、即時インプラントの埋入前に抜歯窩に対して外科的侵襲を最小限にするべきであるという現代のトレンドと一致するものである。

 

 

抜歯窩に残ったPDLがその後どうなるのかを見た論文。通常の抜歯では抜歯窩に残る軟組織は掻把することが多いが、確かに健全なPDLであれば残しておいてもいいのかもしれない。もちろん臨床においてその区別は(感染した軟組織と健全PDLの)ほぼ不可能だが。この研究の肝は、動物実験が正確に行われたかどうかだと思う。マウスの歯を生きたまま、確実に抜歯できるか、そして抜歯窩の口蓋側のみを骨削除し、インプラントを入れるという小さな作業をいい加減にならずにできているかという点。示されている組織がきれいなのでだからといって実験も綺麗に行われているかどうかは分からない。理想的で美しく切れて染まった組織が示されていると考えるべきだ。全てのデータは組織の写真なので、筆者達のでストーリーに乗らされやすいが、個人的には丁寧にやられている印象を受けた。残ったPDLは壊死して消えているのだろうと思っていたので、PDLが徐々に石灰化して新生骨形成に参加しているのはイメージを変える必要があった。この研究の結果が、抜歯窩に健全な歯根膜があればインプラントがうまくいくという風に理解されると早期の抜歯-インプラントを正当化する根拠になる可能性もある。私は単にPDLの生物学研究として読んだ。