歯根膜由来幹細胞はin vivoにおいて長期の生存、自己複製能、複数種の組織を再生する能力を示す

Periodontal-Ligament-Derived Stem Cells Exhibit the Capacity for Long-Term Survival, Self-Renewal,and Regeneration of Multiple Tissue Types in Vivo

Stem Cells Dev. 2014 May 1;23(9):1001-11.

Menicanin et al., University of Adelaide, Adelaide, Australia.

 

初代培養歯根膜幹細胞(PDLSC)は複数の細胞系譜への分化能を有し、骨髄由来間葉系幹細胞と類似した免疫学的表現型を示すことが知られている。本研究で、ブロモデオキシウリジン(BrdU)でラベルしたヒツジPDLSCは免疫不全マウスに移植後8週しても生存しており、血管を伴うシャーピー線維構造を示す骨/セメント質様の石灰化組織を形成する能力を示した。自己複製能を検討するため、PDLSCを8週後に最初の移植物から回収すると、最初のPDLSCと同等の免疫学的表現型および多分化能を示した。最初の移植物より再回収したPDLSCを二回目の異所性移植物として他科移植した。組織形態的解析では、6例中4例において再回収したPDLSCは生存し、線維性の靭帯様組織および血管を伴う硬組織をin vivoで形成したが、最初のPDLSCと比較してその程度は低かった。さらに長期の生存とPDLSCの歯科領域組織の再生能力をヒツジの歯周組織欠損モデルにおいて検討した。BrdUでラベルした自己由来の培養PDLSCをGelform担体に播種し、第二前臼歯に外科的に作製した裂開状歯周組織欠損へ移植した。8週目の組織学的検討では、BrdU陽性のPDLSCがセメント質、骨様組織などの再生歯周組織に関連する組織中に生存することが明らかとなった。これは連続異所生移植を用いてPDLSCの自己複製能を示した最初の報告であり、自己PDLSCの歯周組織欠損モデルでの長期の生存と組織内での重要性を示すものである。

 

PDLSCがserial transplantationに耐えうるかを見た研究。幹細胞はself-renewalの特徴を持っていて、非対称分裂により娘細胞と幹細胞自身を生み出し幹細胞を維持する。PDLSCが真の幹細胞ならば移植部位で分裂増殖してもself-renewalにより幹細胞を維持するはず。造血系幹細胞移植で骨髄内の造血系を再構築できるかで幹細胞性をチェックする実験系として使われていたもの。Leiらが同じく2014にBiomaterialsでほぼ同じようなことを報告していて、PDLSCはDPSCに比べてその能力が劣るという結果だった。この報告でも、2回目の移植では組織再生の程度が下がる結果。実験系は6*10^4細胞をHA/TCPと混ぜて20 ulフィブリノーゲンとトロンビンで固めて移植, FACSでHSP90b(+)の中からマウスSca1陽性を除くことで2次移植材からPDLSCを再回収。2*106細胞を4.5*2.5*1.5mmのゲルフォーム(ゼラチンスポンジ)に10ulでかけ、10ulのフィブリノーゲン+トロンビンで固めて、欠損に入れGTR膜で被覆する。疑問だったのはBrdUでラベルしていたが、こちらは希釈されるのではないかということ、後半のヒツジのモデルの組織像が強拡大過ぎてわからない。どんなモデルでどのくらいの量の再生ができたのか示されていない。PDLSCとHAの混合で骨様組織、シャーピー線維はできるようだ。HSP90bで2度目のPDLSCを採取しているが、最初の組織像でHSP90bで再生組織を染めていないのはなぜか。移植した細胞がどこにいるのかについて興味を持っているのだと思うが(だから血管を積極的に染めているのだろう)移植した幹細胞がニッチェに入り込んでいる事には触れられていない。移植したPDLSCが骨・セメント質になりましたというのは理解しやすいが、serial transplantationで効いてくるのは幹細胞のままでいる細胞であってそれはどこにいるのか。やはり血管周囲なのか?PDLSCは真の幹細胞とは言えないのかもしれません。