WNT反応性の歯根膜由来細胞は抜歯窩の治癒を促進する

A Wnt-Responsive PDL Population Effectuates Extraction Socket Healing

Journal of Dental Research 2018, Vol. 97(7) 803–809

Yuan et al., Stanford University, Stanford, USA

 

歯根膜(PDL)中に存在する幹細胞は歯周組織の恒常性維持に役割を果たしているが、そのin vivoでの同定、源、機能についてはあまり良く分かっていない。本研究において我々は、リネージトレーシングマウスを用いて、PDL中で静止期にいるWNT反応性細胞集団が抜歯に伴って活性化することを見出した。そのWNT反応性の細胞集団は線維骨に付着し残存しているPDLから増殖によって数を増やし、抜歯窩内に遊走した。さらには、WNT反応性前駆細胞では骨形成性タンパクの発現が亢進しており、骨芽細胞へ分化し、骨を形成し抜歯窩を治癒させた。リポソームを用いたWNT3Aタンパク治療剤を用いたところ、抜歯時の一回だけの投与で抜歯窩の治癒を2倍に促進することが明らかとなった。結論として、本研究結果は健全歯根膜中の新しい幹細胞集団を明らかとし、抜歯後の歯槽骨治癒に直接的な役割を果たすことを示した。

 

歯根膜中に存在するWNTに反応している細胞の抜歯後のトレーシングを行った研究。歯根膜中の幹細胞は血管周囲にいると考えられているが、本研究で同定されたAxin2陽性細胞は歯根膜中に散在する。PDLSCとAxin2陽性細胞は同じなのか。おそらく違う。骨芽細胞前駆細胞だろう。抜歯後に増えてくる細胞が特異的な細胞だということがクリアに示される。骨はそれによってできている。見た目以上に細胞は異なっていることが実感される。追加実験も面白い。歯根膜が作る骨の重要性。移植したL-WNT3はどうやって骨形成を促進しているのだろう。WNT反応性細胞の増殖を促進しているのか。