歯髄幹細胞へのGMP準拠環境でのアデノウィルスを用いたHepatocyte growth factor 遺伝子導入はブタにおける歯周組織再生能力を改善する

Adenovirus-mediated transfer of hepatocyte growth factor gene to human dental pulp stem cells under good manufacturing practice improves their potential for periodontal regeneration in swine

Cao et al., Stem Cell Research & Therapy (2015) 6:249

Capital Medical University School of Stomatology, China

 

歯周炎はヒトにおいて最も広く拡大した感染性疾患の一つである。我々は過去に自己歯根膜幹細胞(PDLSCs)とPDLSCsシートを移植することによってブタにおける歯周組織再生が顕著に促進することを報告した。また、ラットのモデルにおいて他家由来骨髄間葉系幹細胞を局所注射することでも歯周組織再生が亢進することを示した。本研究の目的は、ブタのモデルにおいて肝細胞増殖因子(HGF)と歯髄幹細胞(DPSCs)の影響を調べることである。この研究では、GMP準拠環境でヒト由来DPSCsにHGF遺伝子をアデノウィルスを用いて導入した(HGF-hDPSCs)。その細胞を歯周組織再生を見るためにブタモデルに移植した。29頭のブタを使用し、幅5 mm長さ7 mm 深さ3 mmの歯周組織欠損を作成した。12週間後、臨床的検査、レントゲン検査、定量的・組織学的評価を再生した歯周組織に行い、ブタにおける細胞移植による歯周組織再生を比較した。この大動物モデルへのHGF-hDPSCsの局所注射は歯槽骨再生および軟組織の治癒を優意に改善した。hDPSCあるいはHGF-hDPSCsのシート移植は分散したhDPSCsの注射と比較して有意な歯周組織再生を示した。細胞シートはその設置に手術を必要とするため、手術をもちいて治療する歯周炎には適していると思われる。アデノウィルスを用いたHGF遺伝子導入は、低酸素環境や無血清条件でのhDPSCsのアポトーシスを劇的に抑制し血管形成を増加させた。GMP環境において作成されたHGF-hDPSCsはブタにおいて優意に歯槽骨の再生を改善し、本方法による歯周組織再生の臨床応用をの可能性を示した。

 

歯周組織再生にHGFを入れた幹細胞を使うという論文。HGFは筆者らによると増殖促進、血管新生、抗アポトーシス作用があり、心臓、肝臓、腎臓、肺の再生に寄与していることが知られているので使用したとのこと。確かにHGFはMSCの治療効果の作用分子としてよく登場する。作用機序はcMetを介したシグナルで直接的な骨形成誘導ではないと思われる。本研究のユニークな点の一つにインジェクションを用いていることがある。1*10^7細胞を0.6 mlの0.9% NaCL中に懸濁して局注しており、ブタの結果では細胞シートの半分ぐらいの治癒効果はあるようだ。肝心のHGFの効果だが、異所性の石灰化物形成の実験ではHGF-DPSCsでDPSCに比較して随分と大きな硬組織を形成している。HA-TSPを担体にしているが、これは骨か、象牙質か、セメント質か?はっきり言って組織からはわからない。象牙質ではなさそう。むしろセメント質に似ている。ハバース管や象牙細管はない。12週間入れているのも通常の8週より長く結果に関係しているのかもしれない。DPSCを使うということから、すでに移植細胞の局所でのengraftmentを期待しているのではないのだろうか。ブタの欠損の組織標本では欠損底部も示されず、どこからどこまでが再生組織かもわからない。定量的なことを言うのならばこの辺りをしっかり示してほしいところ。歯肉の位置を比較しているようだがこれはどのような意味があるのだろうか。