神経堤由来歯根膜幹細胞のEGFおよびbFGFによるニューロン形成

Neurogenesis of Neural Crest Derived Periodontal Ligament Stem Cells by EGF

and bFGF

J Cell Physiol. 2013 Sep 16. [Epub ahead of print]

Fortino et al., University of Miami, USA

 

神経堤由来歯根膜幹細胞のEGFおよびbFGFによるニューロン形成

 

 

神経変性性疾患や神経疾患に対する幹細胞移植を用いた神経再生が注目されている。筆者らは、以前歯根膜より多能性幹細胞(pluripotent)を同定し報告した(Huang et al., 2009)。歯根膜は神経堤由来幹細胞を含むと考えられる。本研究の目的はEGFbFGFの共刺激によっておこる神経堤由来幹細胞の神経系への分化が歯根膜幹細胞で起こるか否かを検討し、歯根膜を用いた簡単な神経への分化系を提供することである。8日間のEGF+bFGF刺激により、歯根膜幹細胞のSOX1(神経幹細胞), NEFM(成熟神経細胞), beta-III tubulin, nestin(神経前駆細胞/未分化ニューロン)の遺伝子レベルが上昇し、神経突起様の形態を示した。電顕でも神経様あるいはグリア様の形態が観察された。免疫染色ではbeta-III tubulinおよびGFAP(astrocyte)が確認されシナプトフィジン(神経内分泌細胞)も観察された。電気生理学的検討では神経分化を誘導したPDLSCNa+チャンネルを介した内向きの電流の発生を示した。

組織幹細胞は中胚葉組織に由来するものと、神経堤に由来するものが考えられていて、組織によってどちらかあるいは両方だと色々議論がある。BM-MSCも胚葉を越えたin vitroでの分化を示す事があるが、この理由として用いられたりする。顔面頭蓋部の発生における神経堤由来細胞の役割は大きく歯根膜も言わずもがな。神経管閉鎖後の神経堤細胞の遊走によって生体の多くの組織に神経堤細胞が散らばり成体になってもその能力を維持しているとするのは興味深い。ES, iPS様の全能性を示す細胞が成体組織から取られるとの報告が時々あるが、これを取っているのだろうか?。この筆者たちもその一つ。