骨髄および歯根膜由来間葉系幹細胞の骨芽細胞分化は炎症条件下でCanonical Wntシグナリングによって異なる制御を受ける

Canonical Wnt signaling differently modulates osteogenic differentiation of mesenchymal stem cells derived from bone marrow and from periodontal ligament under inflammatory conditions.

Biochim Biophys Acta. 2013 Nov 11. [Epub ahead of print]

Liu et al., The Fourth Military Medical University, China

 

骨髄および歯根膜由来間葉系幹細胞の骨芽細胞分化は炎症条件下でCanonical Wntシグナリングによって異なる制御を受ける

 

 

歯根膜幹細胞は歯根膜の恒常性維持、創傷治癒に役割を持っているが、炎症反応はその機能を変化させると考えられる。Wntシグナリングが骨のリモデリングを制御している報告がなされているが、骨形成促進あるいは骨吸収促進に働くか否かはその環境と関係している。本研究の目的は、in vitroにおける炎症刺激下において、PDLSCおよびBMMSCの骨芽細胞分化に対するcanonical Wnt経路の役割を解明することである。PDLSC,BMMSCともに骨芽細胞、脂肪細胞への分化を示したが、BMMSCの方が強い分化能を示した。In vitroの分化系へのTNF-alphaの添加はPDLSC, BMMSCの骨芽細胞、脂肪細胞分化を抑制したが、PDLSCでより強力に分化を抑制した。この時PDLSCではNFkB, Akt, beta-catenin経路の活性化が起こっていたが、BMMSCではAkt, beta-cateninの活性化は観察されなかった。また、PDLSCではWnt3aの添加がALP, Runx2を減少させた一方でBMMSCでは両者を増強した(DKK-1は逆の影響を与えた)。siRNAbeta-cateninを止めると、PDLSCではTNF-alphaによる骨芽細胞分化抑制は解除され増強した。BMMSCではTNF-alphaによって抑制された骨芽細胞分化beta-cateninの抑制によりさらに減少した。PDLSCにはDKK1Wnt pathway抑制)をBMMSCにはWnt3a(Wnt pathway活性化)を添加すると、両方でTNF-alphaによる骨芽細胞分化の抑制が減弱した。PDLSCBMMSCではTNF-alphaの刺激によって骨芽細胞分化が抑制されたが、この時,PDLSCではWnt signalingが活性化しており分化を抑制し、BMMSCではWnt signalingは抑制され、分化が抑制されていた。炎症刺激がPDLSCの分化能を減少させる事、Wntの活性化がPDLSCの骨芽細胞分化を抑制することが分かった。

PDLSCBMMSCへのWntの影響が真逆であること、TNFによる影響の大きさが異なる事の原因は今一つわからない。このような振り掛け実験は一体何を解明しているのだろうか。