血小板溶解液はヒト歯根膜幹細胞シートの形成を助ける

Human platelet lysate supports the formation of robust human periodontal ligament cell sheets

J Tissue Eng Regen Med. 2018;12:961–972.

Tian et al., Fourth Military Medical University, China

 

幹細胞を用いた細胞シートの利用が様々な医学的な用途において広く認知されてきている。ヒト血小板溶解液(PL)が治療目的の細胞培養において、ウシ胎児血清(FBS)の代替あるいは添加物として利用できることが示されているが、細胞シート作製での重要性については殆ど検討されていない。本研究では、in vitroにおいて歯根膜幹細胞(PDLSC)をシート作製用培地中で培養することでシートを作製した。シート作製用培地には、PLとFBSを様々な混合比率、すなわち10%PLのみ、7.5%PL+2.5%FBS、5%PL+5%FBS、2.5%PL+7.5%FBS、10%FBSのみで加えた。これらすべての組み合わせで、細胞シートを形成することができた。さらに、形成されたすべての細胞材料において、Ⅰ型コラーゲンやファイブロネクチン、インテグリンb1などのマトリクスに関係した遺伝子・タンパクのる類似した発現プロファイルがみられた。興味深いことに、PLとFBSを含む培地で作製された細胞シートに含まれていた細胞は骨形成能が上昇していた。In vivoでの移植実験では、すべての細胞シートが新生骨の形成を促していた。本研究の結果は、PLをFBSの代替あるいは添加物として使用することにより大量のPDLSCシートを形成することができることを示した。ヒトPLの細胞動態やマトリクス産生への影響をさらに検討することによって、細胞シート形成のための最適化や標準化がなされるであろう。

 

ヒトPLをFBSの代わりに細胞シート作製に使えないか、あるいはPLを添加するとシートのクオリティーが向上しないかを検討した論文。そもそも、ヒトPLを使う利点としては、FBSを使う際の感染関係(動物由来病原体、未知の病原体の移動)、免疫反応関係(異種移植による免疫反応、アレルギー反応を避けられる)の欠点を除く点。さらには積極的にFBSよりもPLの方が細胞増殖を良くする、幹細胞の分化能を改善させるかもしれないなどの点がある。しかし結果を見る限り、シート形成も骨形成(in vivo)もそんなに大きな違いはなく、PLを使うと良いことが起こるとは思えない。FBSを使わなくても大丈夫なことが分かったということ。本当によくやられるように、in vitroでb-GP/ascorbic acid/dexamethasoneで4週後にカルシウム染色して良く染まったという実験をしているが、その結果とin vivoでの異所性の骨形成の結果は一致しない。ちなみに移植はTCPと一緒にいれてできた骨はみなTCP表面。骨形成量を切片ではなくマイクロCTで行っている点はより客観的だと思われるが、新生骨とTCPは管電圧で区別できるのだろうか。細胞シートで歯周病を治療するには、培養時にすべて患者由来物質を使い、培養期間に外からの新たな感染がないことを保証し、培養中に細胞が変化しないこと、質的に低下しないこと、悪いものに変化しないこと(たった一個でも)などの様々な工夫が必要だ。さらに、その苦労に見合った結果が伴わなければ実現できない。