Ostholeは細胞シート作製においてエピジェネテックな修飾を介して歯根膜幹細胞の機能を改善する

Osthole improves function of periodontitis periodontal ligament stem cells via epigenetic modification in cell sheets engineering

Sci Rep. 2017 Jul 12;7(1):5254.

Sun et al., Fourth Military Medical University, China

 

歯周炎組織から得られた歯根膜幹細胞(P-PDLSCs)は炎症性微小環境からエピジェネティックな変化を受けており、健常組織からの細胞に比べて骨芽細胞分化が減少している。PDLSCsの再生能に関わるエピジェネティクスをターゲットとした治療戦略を探索することは喫緊の課題である。中国ハーブから採取される低分子化合物であるOstholeは健全PDLSCsの細胞シート形成と骨芽細胞分化を亢進させることが示されている。しかし、OstholeがP-PDLSCsに対しても同様の影響を及ぼすのか、そしてその促進効果のメカニズムについてはいまだわかっていない。本研究の目的はOstholeがP-PDLSCsの減少した骨芽細胞分化能をエピジェネティックな修飾を介して回復させるかどうかを検討するものであった。我々は10-7 MのOstholeがP-PDLSCsの骨芽細胞分化と増殖亢進の最適な濃度であることを見出した。OstholeはP-PDLSCsの骨芽細胞分化に重要な働きをする、ヒストンH3リジン9(H3K9)とヒストン3リジン14(H3K14)を特異的にアセチル化するヒストンアセチル基転移酵素MOZとMORFを上昇させた。さらにOstholeは細胞シート形成を良好にし、歯周炎の動物モデルにおいてPDLSCシートによる骨形成を増強した。本研究はOstholeが細胞シート工学においてエピジェネティック修飾を介して歯周炎を治癒させる良好な薬剤である可能性をしめした。

 

炎症環境から得られたPDLSCsの骨芽細胞分化、増殖、マトリクス産生低下がOstholeによって回復するという論文。Ostholeがヒストンをアセチル化を介して分化などを上げる。筆者らは過去に、ヒストンアセチル化酵素GCN5がPDLSCの骨芽細胞分化を亢進し歯周炎の治療に使える(Li, B. et al. Sci Rep. 6, 26542 (2016).)という報告、それからOstholeが細胞シート形成を骨芽細胞分化を増強する(Gao, L. N. et al. Biomaterials. 34, 9937–9951 (2013))などを報告しており、一貫してヒストンのアセチル化がPDLSCの再生医療への応用にポジティブな効果を及ぼすとしている。動物実験以外の結果は非常に綺麗に示されている。Ostholeを作用させて回復した分化能などは継代を続けても回復が持続するなどはエピジェネティックな作用であれば当然といえば当然だが、説得力がある。しかしやはり動物実験の結果は残念。In vitroでこれだけ綺麗な結果が出ているので、in vivoでの結果も期待してしまうが、異所性の硬組織形成、歯周組織欠損モデルへの移植ともに、不鮮明。写真がよくわからない一方で定量化したバーグラフはきれいに差がついているのは。エピジェネティクスに作用する薬剤によって歯周病を治療するとなるとrejuvenationを期待してしまう。この薬剤は、シート作製を介して治療に使うのだろうか。そのまま服用するのがまず検討することではないか。