歯根膜幹細胞シートの増殖と分化に対する凍結保存の影響

Effect of cryopreservation on proliferation and differentiation of periodontal ligament stem cell sheets

Stem Cell Research & Therapy (2017) 8:77

Li et al., Shandong University, China

 

さまざまな生物材料の長期保存に凍結保存法が広く使われている。しかしながら、歯周組織の再生に非常に優れた移植材である歯根膜幹細胞(PDLSC)シートの凍結保存についての包括的な研究はこれまで行われていない。本研究の目的は歯根膜シートの構造的な結合や機能的な生存活性に対する凍結保存の影響を調べることである。抜去されたヒト臼歯からPDLSCシートを作製し、二群に振り分けた。すなわち、凍結保存群(cPDLSCシート)および新たに作製したコントロール群(fPDLSCシート)である。cPDLSCシートは90%のウシ胎児血清と10%DMSOから成る凍結保存液中で3カ月凍結保存した。両群のPDLSCの生存活性と増殖はcell viability assayとMTT assay を用いて検討した。細胞の多分化能はvon Kossa染色とOil red O 染色を用いて検証した。染色体の安定度についてはカリオタイプ解析によって検討した。さらに、各群の細胞シートを免疫不全マウスの背部に移植しシリウスレッド染色によって組織再生効率を検討した。両群のPDLSCシート間において細胞の生存活性、増殖能力、多分化能、そして染色体の安定度に差は認めれらなかった。さらに、マウスモデルへの移植実験の結果、cPDLSCシートはfPDLSCシートと同等のin vivoにおける骨様組織を形成した。両群において骨様マトリクスのネットワークが同程度に確認された。本研究の結果は凍結保存によってPDLSCシートの生物学的特性が変化しないことを示し、組織再生のためのPDLSC シートの臨床応用を支持する物である。

 

PDLSCシートを作製後、3カ月凍結保存した時、機能的に変化があるか検討した論文。人での臨床応用を視野に入れると、シートの凍結保存ができることは大きな利点になる。シートの作製、凍結、解凍方法は、20 ug/mlのアスコルビン酸添加培地中でコンフルエント後10-14日培養して、端から剥がれてくるのを回収。4度の90%FBS/10%DMSOで-80度24時間、その後、液体窒素中で3カ月保存。解凍はウォーターバスで、その後15%FBS/aMEMでwash、遠心、培養。結果としては、フレッシュに作製したものと全く変わりがないというもの。差がないというデータが綺麗に過ぎる印象。3カ月の凍結にもかかわらず生存も、増殖も差がないのは、私の印象とは異なる。肝心のIn vivoにおける異所性の組織形成能については、象牙質様構造と骨様構造物が同様にできたとされているが、こちらは定量的なデータではなく、よくわからない不鮮明な写真で示されている。TCPのような固い担体と一緒に入れていないので硬組織ができにくいのではないかと思われる。この研究者たちは、以前にVcを入れるとPDLSCシートが良くできる(J Cell Physiol. 2012;227(9):3216–24.)ことや、alloのbio-rootの動物実験を行って(Stem Cells Dev. 2013;22(12):1752–62.)おり、精力的に細胞を使った医療の研究を進めている。