歯根膜幹細胞/前駆細胞-タンパク徐放性担体によるセメント質形成と象牙質表面への結合

Periodontal ligament stem/progenitor cells with protein-releasing scaffolds for cementum formation and integration on dentin surface.

Connect Tissue Res. 2016 Nov;57(6):488-495. Epub 2016 May 23.

Cho et al., Columbia University Medical Center , USA.

 

セメント質形成はセメント質が歯を歯槽骨と橋渡しするという点で歯周組織再生の重要なステップである。この研究は、成長因子を徐放する担体と歯根膜幹細胞/前駆細胞(PDLSCs)を用いて、ヒトの歯の表面に結合した新生セメント質形成を達成するために行われた。ヒトPDLSCsはCD146発現でソートし、CFU-Fアッセイおよび複数の細胞系譜への分化誘導によってその性質を特定した。CTGF、BMP-2、BMP-7を含んだポリ乳酸ポリグリコール酸共重合体(PLGA)微小塊を含んだ、ポリカプロラクタン担体を3Dプリンターで作製した。ヒト抜去歯からセメント質を除去し、PDLSCを播種した担体を、露出した象牙質表面に設置した。セメント質/骨誘導培地で6週間培養した後、セメント質形成と象牙質との結合を組織計測および免疫蛍光染色、qRT-PCR法を用いて評価した。CD146のソートとシングルセル由来のクローンで選別した歯根膜細胞はヘテロな元の集団と比べて有意に高いコロニー形成能および多分化能を示した。6週間後、増殖因子を供給したすべての群において、象牙質表面に新しいセメント質様の形成を認めた。BMP-2とBMP-7は他の群に比べて有意に厚い新生層組織を形成し、一方CTGFとBMP-7では象牙質表面への有意な結合がみられた。BMP-7を用いたサンプルにおける新生石灰化組織は、CEMP-1を発現していた。それに一致してBMP-7はCEMP-1の遺伝子発現を上昇させた。本研究の結果は、歯周組織再生で必須とされる幹細胞を用いたセメント質形成において、重要な進歩と考えらえる。

 

幹細胞移植ではなく、局所への細胞呼び込みによって再生を起こそうという研究。個人的には、こちらの方法に興味がある。老化した個体でhomingやmigrationによって再生を増強する。今見られている再生もほぼすべてこれなわけで、この方法の条件検討や新規因子の発見が実用レベルでは重要ではないかと。Connective tissue researchが読めない状況なので切片などを見てみたいのだが、あまりクリアなデータではなさそうな書き方がされている。この筆者らは(Lee CH)は、homingによって再生をと強く考えているらしく、以前に歯の形をした担体にSDF-1とBMP-7を含んでラットの背部へ埋めると細胞がより集まっていたが、歯の構造が再現されてはいない。(J Dent Res. 2010 Aug; 89(8): 842–847.)という論文を書いている。この論文はそれに近い。ブレイクスルーとなるほどの効果は無かったようで残念だが、似たような研究で、イヌの抜去歯の歯根を乾かしてPDLを除去し、SDF-1,BMP-7入りのコラーゲンに漬けたものとコラーゲンだけに漬けたものを、後日ソケットに戻して6か月後、48%が完全に付着の回復をみた。コラーゲンだけだと100%失敗、アンキローシス、根吸収。という面白い結果もある(Zhu et al., J Transl Med. 2015 Nov 14;13:357)やはり論文全体を読みたい(抄録のみ)