歯周組織再生に対する多血小板フィブリンと歯根膜および顎骨由来間葉系幹細胞シートの利用

The use of platelet-rich fibrin combined with periodontal ligament and jaw bone mesenchymal stem cell sheets for periodontal tissue engineering

Scientific Reports 2016 Jun 21;6:28126.

Fourth Military Medical University, China.

 

歯周組織再生はセメント質、歯根膜(PDL)、歯槽骨という少なくとも3つの特徴的な組織の再生を伴う。この研究で我々はまずPDL幹細胞(PDLSCs)そして顎骨幹細胞(JBMSCs)を単離した。これらの細胞に対してアスコルビン酸を豊富に含む方法で細胞シートの形成を促し、その細胞シートの形態、厚さ、遺伝子発現といった性質を比較した。ヒト末梢血より多血小板フィブリン(PRF)を作製し、様々な成長因子を含む吸収性担体とした。最後に、PDLSCシート、PRF担体、JBMSCシートから成る細胞材料のIn vivoでの歯周組織再生能力を免疫不全マウスのモデルで評価した。このモデルでは象牙質マトリクス(TDM)とハイドロキシアパタイト/リン酸3カルシウム(HA/TCP)を枠組みとして歯根膜空隙を模倣したスペースを作製しPDLSCシート/PRF/JBMSCシートの複合体を設置した。移植8週後、PDLSCシートはPDL様の組織を形成する傾向にあり、JBMSCシートは主に骨様組織を形成する傾向にあった。さらに、PDLSCシート/PRF/JBMSCシートの複合体はPDL、骨様組織を含む、歯周組織様構造を形成した。この細胞移植方法をさらに改善することにによって、将来的な歯周組織再生治療のための効果的な方法となる可能性がある。

 

以前よりこのグループが行っているPDLSCシートでセメント/PDLを、JBMSCで骨を作るという戦略にPRFを組み合わせた論文。実験系がユニークなのでよく理解する必要がある。PRFの作り方は、10 mLの末梢血を凝固剤なしで遠心(400g 12分)し、上の血漿を捨て、フィブリン塊を下の赤血球部から摘みとる。フィブリン塊からガーゼで水分を抜き取り膜状に回収する。象牙質マトリクスの作り方は、象牙質片を切り取り17%EDTAで5分、10%EDTAで5分、5%EDTAで10分処理する。ddH2Oで洗い、超音波洗浄、乾燥、UV滅菌後、PBS中24時間、dH2O洗い、超音波洗浄、aMEM中に保存。移植材は、HA/TCPブロックの中に、象牙質マトリクスがはまりこんで、間に0.5-1ミリの間隔ができるようにドリルで穴をあける。PDLSCシートの上に象牙質マトリクスを置いて包み、その外にPRFシート、さらにその外をJBMSCシートで巻く。アスコルビン酸含有培養液で90分培養する。HA/TCPの中にはめて6週齢免疫不全マウスの背部皮下に移植する。バイオルートの移植に近い系を考えているのだろう(あちらはCapital Medical University School of Stomatology) 。In Vivoのデータではセメントが出来ているのが見えなかった、その理由はセメントと象牙質は部位的にも構成要素も、石灰化度も似ていて、厚い切片を用いたため見えなかったとのこと。根拠としてこの論文を引いている。(Bosshardt, D. D. & Sculean, A. Does Periodontal Regeneration Really Work? Periodontol 2000. 51, 208–219 (2009).)組織標本を見てもどこにPDLが再生しているのか、あまりクリアに示されていない。象牙質にPDLSCシート、HA/TCPに骨髄MSCシートでセメント-PDL、骨がそれぞれ本当にできるのだろうか。背部皮下と歯周組織内ではずいぶん結果も違うはずだと思うがどうか。背部の系は、細胞の評価程度ではないか。