糖尿病患者由来歯肉および歯根膜幹細胞の増殖能についての前臨床的評価

Preclinical Assessment of the Proliferation Capacity of Gingival and Periodontal Ligament Stem Cells from Diabetic Patients 

Open Access Maced J Med Sci. 2018 Feb 1;6(2):254-259. doi: 10.3889/oamjms.2018.076. eCollection 2018 Feb 15. 

Mostafa Assem et al., National Research Centre, Cairo, Egypt

 

近年、幹細胞は様々な疾患に対する可能な治療選択肢として大きな注目を浴びている。特に口腔内あるいは顎顔面領域は様々な特徴的な間葉系幹細胞(MSC)集団を含んでおり、それらは多分化能を持っている。本報告では、コントロールされた糖尿病患者(2型)と健常者から得られた幹細胞の増殖能に対する糖尿病の影響を検討することを目的とした。糖尿病あるいは健常者の歯肉(GSC)および歯根膜(PDLSC)から得られた幹細胞の増殖をMTTアッセイにより比較した。Survivinの遺伝子発現をqRT-PCR法を用いて測定した。すべての群においてSurvivinの発現と細胞の増殖の間に有意な相関関係がみられ、Survivinの細胞増殖における重要性が示唆された。非糖尿病群が糖尿病群より細胞増殖が高いことはSurvivinの発現によっても確認された。これらの結果より、PDLSCとGSCは増殖能が高いことに加え簡単に採取できることより、自己細胞を用いた再生治療における有力な細胞源の候補となると結論できる。

 

間葉系幹細胞の機能が糖尿病によって低下するかをコントロールされた糖尿病患者と健常者の比較で行っている研究。少なくとも12か月DMであって、経口DM薬で12か月以上コントロールできている患者となれば、通常の歯周治療に対する反応性も差がないのではないか。そんな二群間で歯肉、歯根膜由来の間葉系幹細胞で増殖能に差があるとはどういうことか。DMであった期間に蓄積された変化がエピジェネティックに残っているのか。12か月以上血糖がコントロールされても幹細胞の増殖能は著しく低い点が興味深い。他のリスク因子、喫煙などではどうなのか。幹細胞機能として増殖のみを検討しているが、分化能、免疫制御などの機能は同様なのか。差がないとして形態の写真が出ているがほとんど見えない。FACSではCD105, CD90, CD45が選ばれているがこれらは間葉系の細胞であれば差がないのはその通り。突然Survivinが出てくるが、どのようにこの分子に着目したのだろう。増殖との相関が出ているが、細胞周期などに関連する遺伝子ならばそれも当然か。SurvivinがDM特異的に細胞機能を制御しているとなると興味深い。GMSCはともかく、PDLSCは簡単に採取できる幹細胞ソースだろうか??糖尿病患者あるいは病歴のある患者では幹細胞移植による再生は条件が悪いというのが結論ではないだろうか。