Dentine sialoproteinは歯根膜幹細胞の増殖、分化を制御する

Domain of dentine sialoprotein mediates proliferation and differentiation of human periodontal ligament stem cells. 

PLoS One. 2013 Dec 3;8(12):e81655.

Ozer et al., University of Texas

 

Dentine sialoproteinは歯根膜幹細胞の増殖、分化を制御する

 

発生学的に象牙質形成は歯根膜の形成に役割を持っていると考えられる。歯根膜形成において前駆細胞・幹細胞が象牙質表面と接触することにより、その増殖、分化を制御されている可能性がある。Dentin sialoprotein (DSP)とDentin phosphoprotein (DPP)はDentin sialophosphoprotein (DSPP)から切り離された産物であり、DSPP-/-マウスでは骨およびセメント質構造の異常、歯根膜の剥離などが観察され歯周組織形成に重要と考えられる。Full-lengthのDSPPはin vivoではあまり観察されず、プロテアーゼによりDSPとDPPに、さらに小さな断片に切断される。本研究ではDSPのNH2末端断片、およびCOOH末端断片の歯根膜幹細胞の分化、増殖への影響を検討した。DPSSの発現はin situ hybridizationで確認され歯の発生段階において象牙芽細胞に強く、骨や歯根膜の細胞に弱く、また免疫染色においてマウスの歯根膜、セメント質がCOOH末端断片DSPを発現することが示された。DSP-COOH末端のリコンビナントタンパクは歯根膜幹細胞の接着、遊走、増殖を増強させ、in vitroの分化系に入れるとALP活性、21日後のAlizarine red陽性像を増強した。この時、各種骨芽細胞分化マーカーの発現が亢進していた。これらの結果よりDSPのCOOH末端ペプチドはセメント質形成に役割を果たしている可能性がある。

 

象牙質形成がセメント質を誘導する物質を含んでいるという仮説に元づく興味深い結果。幹細胞が場を認識して遊走・増殖・分化する時、何を捉えているのか。歯小嚢由来dental mesenchymeが歯根においてはセメントを作る理由は象牙質と接触するからなのか。組織で発現をみて、in vitroでリコンビナントを使って振り掛け実験を行い、骨芽細胞(セメント芽細胞では無い)分化が増強する結果は実験としては想定通りであり驚きは無い。そもそも多くのマトリクスタンパクが同様の実験をすれば同様の結果を示すのではないか。DSP-COOHがセメント質形成を促すニッチェとなるなら露出根面に、このタンパクを塗布することが再生治療となるのか。また、歯根膜幹細胞はHydroxyapatiteと一緒に背部皮下に埋めるとセメント質―歯根膜様組織を作る報告が数多くある。この場合HAはDSPPを含まない。このあたりの追加実験を是非やってほしい。