歯根膜由来幹細胞はin vivoにおいて長期生存、自己増殖および複数組織への再生能力を示す

Periodontal Ligament Derived Stem Cells Exhibit the Capacity for Long-Term Survival, Self-Renewal and Regeneration of Multiple Tissue Types in Vivo.

Stem Cells Dev. 2013 Dec 18.

Menicanin D et al., University of Adelaide, Australia

 

歯根膜由来幹細胞はin vivoにおいて長期生存、自己増殖および複数組織への再生能力を示す

 

歯根膜由来幹細胞(PDLSC)は間葉系幹細胞様(MSC)の性質を示す事が知られる一方セメント質や腱・靱帯特異的遺伝子発現が高いなどのユニークな特徴を持つ。移植幹細胞のin vivoにおける生存は再生治療の成果に関係すると考えられており、幹細胞が自己増殖するか否かは重要である。本研究の目的はヒツジ由来PDLSCHA/TCPと共にNOD/SCIDマウスの背部へ移植し、8週後に回収された組織から再度移植細胞を抽出し培養し、その細胞を再びマウス皮下へ移植しin vivoにおける再生能力が維持されるか否かを検討する事であった。PDLSCは骨・脂肪・軟骨へのin vitro分化能を示し、FACSではHSP90(STRO-4)陽性(99.5%)であった。PDSLCBrdUでラベル後、SCIDマウスの背部へ移植した。8週後PDLSCHA表面に骨・セメント様組織およびシャーピー線維様構造体を作った。この組織からコラゲナーゼ/ディスパーゼ処理によって再度得られた細胞をマウス由来MSCの混入を除くためにSca1陽性細胞を除いた(マウスMSCHSP90陽性:4.9%、Sca-1陽性:95.1%であった)。これらの細胞はin vitroの骨・脂肪・軟骨への分化能を示し、2度目に背部皮下へ移植した所、6例中4例で硬組織および歯根膜様組織の形成が観察され、BrdU陽性細胞が再生組織に見られた。また、羊由来PDLSCBrdUでラベルし、羊の歯周組織欠損へ移植すると、再生組織内にラベル細胞が観察された。これらの結果は,PDLSCin vivoにおいて自己増殖能を有することを示し、細胞移植による組織再生に直接関与していると考えられる。

 

幹細胞の自己増殖能を証明するために移植を繰り返して組織が再生される事を示した論文。野心的な研究であるがいくつか疑問がある。マウス背部にできた組織からのPDLSCの抽出の方法である。これには羊PDLSCHSP90陽性である事と、マウスMSCHSP90陰性、Sca-1陽性である事を使っている。これで本当にホスト(マウス)由来細胞が除外できるかという点。マウス由来でSca-1陰性HSP90陽性細胞が無いかどうか。FACSソートの前後でHSP90陽性率が殆ど変らないのは、培養によってHSP90陰性細胞が除かれているからであって、ソートの意味はほとんどないのではないか。第二にBrdUは増殖期にある細胞のみをラベルするものであるので最初の培養細胞の中にはBrdU陽性、陰性PDLSCが混在すると考えられる。BrdUラベルがヘテロである事が結果にどの様に影響しているのか。陽性細胞が確認されれば良いのか?ラベルの方法はほかにも考慮の余地があったと思われる。PDLSC培養がヘテロである事に意識的でなければいけない。2回目の移植において歯周組織様組織を作った群数が減少している(6例中4例)のは何を意味するのか。移植した幹細胞はニッチに定着しないのか。ほとんどのデータが組織などの写真なのでデータの信憑性は疑われるべきだろう。そもそも移植した細胞はどこに定着するのか。異所性の組織形成と歯周組織内での再生(同所性(?))のプロセスは同じなのか。ホストの細胞の関与は同じと考えてよいのか。