歯根膜前駆細胞のin vivoにおける同定

In vivo Identification of periodontal progenitor cells

J Dent Res 92(8):709-715, 2013

Roguljic et al., University of Connecticut Health Center, USA

 

歯根膜前駆細胞のin vivoにおける同定

 

 

歯根膜は歯周組織を形成する様々な細胞へ分化する能力を持つ細胞(前駆細胞/幹細胞)を含むことが古くから知られている。その前駆細胞/幹細胞が歯周組織のどこに存在するのかは完全には分かっていない。筆者らは以前に根尖側歯根膜中に存在するaSMA陽性の細胞が前駆細胞様である事を示した(aSMA-GFP陽性細胞をFACSで取り出すと、骨芽細胞様に分化する)。本研究ではaSMA-GFP, Col2.3-GFP, Scleraxis-GFPそしてSMA9+(aSMACreERT2/Ai9)を用いてaSMA+細胞の局在、時間経過および歯周組織への損傷後の同細胞の挙動を追った。aSMA-GFPは過去の報告同様、歯根膜の血管、特に根尖近くに存在し、Col2.3-GFPは象牙芽細胞、骨芽細胞、骨細胞、根尖のセメント芽細胞に見られScleraxis-GFPは歯根膜全体に発現していた。SMA9+Tamoxifen投与2日後は根尖付近血管周囲にあり、17日後には骨芽細胞と重なり、7週後にはセメント芽細胞、セメント細胞と重なった。歯周組織にブレードで損傷を与えると、7日後に歯根膜中に多くのSMA9+が見られ、4週後にはSMA9+は歯根膜細胞のほかに骨芽細胞、セメント芽細胞にも多数見られるようになった。

Fate Tracingを使った興味深い研究である。損傷を与えた後に血管周囲の細胞が劇的に増殖することは言われていたが、それが綺麗に示されていて歯周組織の修復過程をイメージするのに重要な画である。そもそもaSMA-GFPがなぜ根尖付近にばかりあるのか、pericyteのマーカーとしてのaSMAの限界か、血管の太さによるのか。aSMA-GFPがすべての歯根膜に存在する前駆細胞/幹細胞をマークしているかは疑わしい。骨膜に存在する前駆細胞/幹細胞はどうだろう。根尖以外にも前駆細胞/幹細胞は存在するのではないか。