3次元培養モデルにおけるヒトMSCおよびPDLSCのPGE2、BMP-7による分化

Differentiation of hMSC and hPDLSC induced by PGE2 or BMP-7 in 3D models

Prostaglandins, Leukotrienes and Essential Fatty Acids, 122(2017) 30-37

Ern et al., Ludwig-Maximilians-Universität München, Germany

 

歯周病学では病的な組織欠損に対する再生治療の重要性がますます増加している。さまざまな分子の中で、BMP-7の骨形成への影響が歯あるいは歯槽骨の発生において大きな役割を果たしている。ヒト歯根膜幹細胞(hPDLSC)やヒト間葉系幹細胞(hMSC)は種々の組織へ分化する能力を有している。プロスタグランジンE2(PGE2)については、歯周病の炎症において、破骨細胞を活性化し最終的には歯を支える骨の吸収をもたらすことが多くの研究で示されている。ここで我々はPGE2がどのように再生過程に影響するかを観察することを目的とした。PGE2、BMP-7のhMSCおよびhPDLSCの骨分化への影響を3次元培養において検討し、それにはqRT-PCR、免疫化学組織、反射電子顕微鏡(REM)を用いた。BMP-7はhMSCでは骨形成マーカーの発現を上昇させ、hPDLSC-TERTでは減少させた。BMP-7はhMSCと比較してhPDLSCでは弱い骨分化しか示さなかった。一方、PGE2は両細胞で骨分化を減少させ、代謝過程を阻害した。両細胞種ともに担体上での増殖、接着は良好であった。よく発達した形態的特徴や骨分化促進から、本担体が骨再生のための移植候補材料となる可能性が考えられた。免疫組織化学におけるhPDLSCサンプルでのCAP陽性とさらに強いhMSC検体でのCAP陽性から、セメント質形成が開始し歯周組織再生が起こっていた事がうかがえた。結論として、BMP-7は、特にMSCと組み合わせると歯周組織再生に対して良好な移植であると考えられる。本研究結果は歯周組織再生において炎症が重要な役割を果たしていることを示している。PGE2はPDLSCだけでなくMSCの骨分化を抑制することにより骨吸収を促進する重要なメディエーターである。よって再生治療は炎症をコントロールする抗炎症的方法との組み合わせで行われるべきである。

 

PDLSC, MSCBMP-7, PGE2を作用させるとどうなるかという論文。本文中の骨形成のFigureできれいな骨ができていたので読んだが、結論から言うとひどい。結局、Figure 3で見事な骨の形成が切片上で見えているが、in vivoへの移植は本研究で行われていない。見えている骨は担体(ヒト由来骨)の物でin vitroで骨マトリクス様の材料上で3次元培養して切片を切ってみているだけ。さらには肝心の3次元培養した細胞はほとんど見えない。免疫染色しているが何を見せようとしているのか全く分からない。BMP-7は歯根膜中に発現があって骨再生にFDA認可もあるということでわかるが、PGE2がどうして研究に出てきたか不明。分化誘導時の遺伝子発現も、分化誘導なしのコントロールもない。中国からのグループの研究ばかりだったのでこの論文を読んだがこれはあまりお勧めできない。BMPは骨を作る非常に強力なinducerだが、どうして歯周組織再生に使われないのか。FGFやPDGFに先んじて使われても全くおかしくない。動物では効くのにヒトでは効かない。移植後の炎症が大きい。アンキローシスが起こる。などなど。GDF-5は第二相の臨床試験が行われ、歯周組織再生が増加する傾向がみられるが統計学的有意差なし、サンプルサイズを大きくした研究が必要と報告されたのが2011.その後、7年どうなったのだろう。(J Clin Periodontol. 2011 Nov;38(11):1044-54.)