組織特異的な細胞塊は再生の微小環境を再構築することにより歯周組織再生を加速させる

Tissue-specific composite cell aggregates drive periodontium tissue regeneration by reconstructing a regenerative microenvironment

J Tissue Eng Regen Med. 2017 Jun;11(6):1792-1805.

Zhu B et al., Fourth Military Medical University, China

 

歯周炎は歯周組織破壊の最も大きな原因である。障害を受けた組織の再生が期待しうる最終的な治療のゴールとなる。しかしながら、機能的な歯根膜(PDL)の再生は様々な要因によって困難である。近年、歯根膜幹細胞(PDLSCs)や骨髄間葉系幹細胞(BMMSCs)がPDLの病理学的、生理学的な再生に関与していることが報告されている。さらに、再生の過程では異なる細胞同士の相互作用が生物活性に影響している。そこで、本研究の目的はPDLSCsとBMMSCs(腸骨あるいは顎骨由来)からなる異なる由来の細胞塊(CA)の再生環境の再構築における再生への利用について検討することである。本研究の結果は、3つのMSCによるCAが小さく細胞が規則的に配列している一方で、顎骨由来MSC(JBMMSC)CAsが他のものに比べて多量の細胞外マトリクスを産生することを示した。さらにはPDLSCs/JBMMSCsのCAsが高いALP, COL-1,fibronectin, integrin b1, periostinを発現し、歯周組織再生により適した機能を持つことを示した。興味深いことに、PDLSC/JBMMSCからなるCAsはマウスの異所性の移植、あるいはミニブタの同所移植モデルにおいてより多くの機能的なPDL様の新付着を形成した。これらの結果はPDLSC/JBMMSCの異なる細胞からなるCAsが適した再生微小環境をもたらし、より安定した機能的な歯周組織再生につながることを示唆している。本方法は、歯周炎における歯周組織欠損を解消する実践可能な戦略となり、将来的な臨床応用の強力な実験的エビデンスとなるであろう。

 

由来の異なるMSCを組み合わせると歯周組織再生により適した移植材になるのではないかという論文。TDM(象牙質マトリクス)やCBB(セラミック牛骨)の周囲にまずPDLSCシートを二層巻き、さらに顎骨由来MSCもしくは腸骨由来MSCを巻きつけて見てみるというのは、PDLSCシートにセメント+PDLを作らせて、その外側で骨由来MSCシートに骨を作らせようという考えなのだと思うが、結果としてはあまりうまくいっていない。さらに顎骨由来JBと腸骨由来IB由来で差を見ようとしているのだから、あまり歯切れのよくない結果になっている。前半は、in vitroの分化マーカーだとか石灰化なんかを見ていて、少しは差があるようだ。肝心なのはin vivoで免疫不全マウスの背部に埋める系と、ミニブタの抜歯後の無歯顎に穴をあけて埋める2種類を行っている。背部の異所性の系では組織像が出ているがセメントの形成や骨の明らかな形成が結果がクリアに示されない。骨に至ってはboneではなくbone-like matrixだ。ミニブタの系では、定量的なことは何も言っていないし、組織像でもよくわからない。このラボの先生方はよくこの系を使うのだが、出来ればもっと説得力のある図を出してほしいし、どのデータでもコントロールを提示してほしい。表現も大げさでちょっと残念だ。温度応答性培養皿によるPDLシートもそうだが、アスコルビン酸でコラーゲン産生を増強させて細胞をマトリクスごと回収して移植するというのがよくやられている。歯周組織再生にはこれが良い方法だということなのだろうか。シート状にして回収するために用いたアスコルビン酸が結果的に良いのか、使っている以上よく見せたいのか。