In vivoへ移植した後の歯髄幹細胞および歯根膜幹細胞の間葉系幹細胞としての特徴について

Mesenchymal stem cell characteristics of dental pulp and periodontal ligament stem cells after in vivo transplantation.

Biomaterials. 2014 Aug;35(24):6332-43.

Lei M et al., Fourth Military Medical University, China

 

出生後の歯髄あるいは歯根膜から得られた間葉系幹細胞(MSC)はin vitroで多分化能を示し、in vivoではそれぞれ関連する組織を形成することができる。しかしながら、in vivoへ移植された後の歯髄幹細胞(DPSC)、歯根膜幹細胞(PDLSC)の性質についてはほとんどわかっていない。本研究では、ヒトDPS、PDLSCシートを異所性に移植した結果としてin vivoで形成された歯髄様あるいは歯根膜用組織から細胞を再度単利した(re-DPCsおよびre-PDLCsとそれぞれ呼ぶ)。コロニー形成能、細胞表面抗原、多分化能などの細胞の特徴について移植の前後で評価した。Re-DPCs、re-PDLCいずれもヒト由来かつ間葉系由来でありMSCマーカーSTRO-1,CD146,CD29, CD90,CD105陽性であった。reDPCsはコロニー形成を維持することができた。さらに、どちらの細胞も石灰化沈着を形成することができ、脂肪細胞、軟骨細胞へ分化可能であった。しかしながら、定量的な計測あるいは遺伝子発現の検討では、re-DPCsとre-PDLCの骨/軟への骨分化能がDPSC,PDLSCと比較して有意に減少していることが明らかとなった (P<0.05)。re-PDLCsではre-DPCsよりも間葉系幹細胞の特徴が大きく減少していた。結論として、DPSCs、PDLSCs両者ともにin vivoへの移植後もMSC様の性質を維持し、PDLSCsと比較してDPSCsはよりin vivoにおいて安定していた。これらの結果は、細胞治療や組織工学における歯科領域由来幹細胞の利用拡大を支持する細胞あるいは分子レベルの論拠となるであろう。

 

移植した細胞がin vivoでずっと幹細胞で居続けるかどうかを検証した論文。一般的に自己複製能(self-renewal)のある幹細胞は非対称分裂によって幹細胞を維持しつつ分化細胞を作ってゆくので、細胞移植してできた組織においても移植した細胞が幹細胞として機能しているはずだという仮説。HSC造血幹細胞は骨髄移植によって何度も造血システムを再生することができることがHSCの証明となるが、その発想を借用したものか。結果は、PDLSCはDPSCに比べて幹細胞の維持が不完全のようだ。そもそもMSCは本当の幹細胞なのかという議論はずっとあって、そういうことだと思われる。またIn vitroでよく用いられる骨芽細胞分化、脂肪細胞分化、軟骨分化とin vivoでその組織を形成するということは全く別の事と考えるべきだろう。Re-PDLCはなかなか移植細胞からの細胞のみを取ることは難しいと思われ、実際FACSでre-PDLCは2つのピークを示すものがあってホスト細胞の混入も多いのだろう。筆者たちも、再度取ってきた細胞をre-DPCs, re-PDLCsとしており、これは幹細胞ではないと思っていたのではないだろうか。移植したMSCが幹細胞として機能して組織を作って、さらにできた組織の幹細胞ニッチェにはまり込んで次には恒常性維持に働いているというシナリオは想像力の産物ではないか。