スキャホールド無しの細胞ペレットの移植は歯周組織再生に応用可能である

Scaffold-Free Cell Pellet Transplantations can be Applied to Periodontal Regeneration

Cell Transplantation, Vol. 23, pp. 181–194, 2014

Fourth Military Medical University, China

 

細胞移植が歯周病の新規治療法として提唱されているが、細胞ペレットは豊富な細胞外マトリクスECM)を放出し、細胞移植担体による有害性を減弱できるなどの有用性がある。本研究は、担体無しの歯根膜幹細胞(PDLSC)ペレット(MUCP)を作成しその再生能を検証した。我々は単層の細胞シートから細胞ペレット(MCP)を、そして多層化した細胞シート(MUCS)からMUCPを作製した。免疫組織化学、走査型電子顕微鏡、real time-PCR法、ウェスタンブロッティング法はMUCPが高いレベルの一・三型コラーゲン、ファイブロネクチン、ラミニンを含むことを示した。さらに、ECMの劇的な増加によって細胞接着、遊走、増殖が改善した。最後に、大網腔(腹膜下の腔)および歯周組織欠損へ移植するとすべての移植物は正しく並んだセメント-歯根膜様の複合体を形成したが、ミネラルの沈着と線維の配列はMCPよりMUCPにおいてより明瞭であった。本研究結果は、MUCPが将来的な臨床応用可能な歯周組織修復法として有望であることを示している。

 

細胞シートではなくペレットにして移植するという戦略。紛らわしいのでまとめるとMCPとMUCPが登場し、いずれもモノレーヤーで培養したものを使うが、モノレーヤーのままスクレーパーではがしてポリプロピレンチューブ中で10日培養したものがMCP。一方、モノレーヤーを丁寧にはがして、他のウェル中の細胞に重ねることを3回繰り返してからチューブ中で培養したのがMUSPとなる。大きな違いは細胞数とECM量ということか。MCPとMUSPの差は含まれる細胞とECM量の差で説明できるように思えるためFigure1-6は大きな意味を見いだせない。興味深いのはFigure7以降の結果。まずin vitroで象牙質片と培養するとMUCPで顕著な石灰化物が象牙質表面にできている。大網への移植では、MUCP, MCPともにきれいな、それもかなり厚みのあるセメント様硬組織が象牙質表面に見られ、細胞シートでも石灰化した層がみられる。そして歯周組織欠損への移植では石灰化物形成がMUCP>MCPで見られている。この実験の欠損は非常に小さいので、何もしなくても治る部分が多いと思われるがそれを見ているのではないか?In vitro共培養や大網でみられる多量の新生セメント質が、再生条件のよいと思われる歯周組織欠損モデルではほとんどうっすらしか見られないのは、象牙質片作成の工程を疑わせる。そもそも移植の実験に象牙質片のみのデータがなく、歯周組織欠損では無処置群のコントロールがない。すべての実験がラットで行われていて、PDLSCの採取・培養、実験モデルなど高度な正確性を要求される実験が適切に行われていたか疑われてしまうのは仕方のないところではないか。