Connexin-43を用いた成体組織からの神経堤由来多能性幹細胞の単離

Isolation of pluripotent neural crest-derived stem cells from adult human tissues by connexin-43 enrichment.

Stem Cells Dev. 2013 Nov 1;22(21):2906-14.

Pelaez et al., Miami VA Healthcare System, USA

 

Connexin-43を用いた成体組織からの神経堤由来多能性幹細胞の単離

 

 

神経堤細胞は発生段階において神経板と外胚葉上皮の間に形成される幹細胞であり、神経管閉鎖と共に神経上皮から離れて背側から腹側へ遊走する。近年、成体組織に存在する神経堤細胞の報告がなされている。Connexin-43(Cx43)は神経堤細胞の遊走に関与するGap junctionである。本研究の目的は培養歯根膜幹細胞(PDLSC)からCx43発現細胞を抽出しその多能性を検討することである。PDLSC18-20歳のドナーから採取された歯根膜から培養しCx43陽性細胞をDynabeadsにより単離した(Selection前:陽性率19.64%, 後:陽性率91.78%)Cx43陽性細胞は免疫染色でOct4,Nanog, Sox2 (ES,iPS)陽性であり、Sox10,p75, Nestin(神経堤)陽性であった。免疫不全マウスの腎臓・精巣内へCx43陽性細胞をマトリゲルと共に移植すると3胚葉由来の組織から成るテラトーマを形成した。特に発生段階で神経堤細胞から形成されると考えられているエクリン汗腺、筋肉、神経組織、軟骨、骨は成熟した構造が見られた。さらに、形成された組織はヒトnuclear mitotic apparatus protein(NuMA)陽性であり移植細胞に由来することが確認された。PDLSCからCx43を用いて神経堤幹細胞を単離できることが示された。

成体組織中にテラトーマを作れるような細胞がいるという事は驚きである。このような細胞を細胞移植に使う事は可能なのか?。間葉系幹細胞はヘテロであるという一般的な感触と神経堤由来幹細胞の関係はあるのか。歯根膜の場合、間葉系幹細胞様の性質を示すPDLSCは神経堤由来幹細胞なのか。ES細胞からはレチノイン酸(中胚葉、内胚葉分化を抑制)によって神経上皮系細胞(Sox1+,神経系マーカー+)が出来、ここから神経堤由来間葉系幹細胞が誘導される報告がある。さらに神経堤細胞をマークするP0-Cre×Rosa26-Stop-YFPマウスでは、間葉系幹細胞(PDGFRa陽性)の一部はYFP陽性で、神経堤由来であることが示されている。骨髄中の神経堤由来・間葉系幹細胞はマウスの成長と共に減少し12週齢では消失する(Takashima et al., 2007, Sakurai et al., 2006)。骨髄と歯根膜は発生学的に異なりPDLSCは神経堤由来細胞の可能性がより高いと思われる。骨髄で年齢と共に消えてしまうと中胚葉由来間葉系幹細胞が残る。