歯根膜幹細胞の長期培養および幹細胞性維持のための最適な培養液について

Optimal Medium Formulation for the Long-Term Expansion and Stemness Maintenance of Periodontal Ligament Stem Cells

J Periodontol. 2013 Oct;84(10):1434-44.

Jung et al., Inha University, South Korea.

 

歯根膜幹細胞の長期培養および幹細胞性維持のための最適な培養液について

 

間葉系幹細胞に限らず幹細胞は分離培養を重ねるごとに性質が変化する。具体的には分化能の低下、増殖能の低下などが知られている。そのため、よく論文中では「passage3-5を使用した」など、考えられる培養に起因する変化が無い範囲で実験が行われたことをわざわざ示すことが求められる。さて、この論文はヒト抜去歯から歯根膜幹細胞を培養し、その際Dulbecco’s MEM(DMEM)およびalpha-MEM(aMEM)をベースとした培養液を使用し、それらの培養液が歯根膜細胞のコロニー形成能、増殖能、骨芽細胞への分化能、細胞表面抗原の発現パターンにどの様な影響を及ぼすかを検討している。まず、面白いのはDMEMでは歯根膜幹細胞の初期培養ができなかったということである。そのため、P0からP3まではaMEM培地で培養して細胞数を増やし、その後、つまりP4以降でaMEMで培養するものDMEMで培養する物にグループ分けして比較している。結果としてaMEM培地で培養した細胞の方がコロニー形成数、細胞数、ALP活性においてDMEMで培養した細胞に比べて高かったことが示されている。

この論文のポイントは血清濃度ではないかと思っています。aMEMでは15%が、DMEMでは10%が用いられている。もしDMEM15%血清が用いられていたら結果は大きく異なっていたのではないかと思うのだが。血清濃度が異なるため、基礎培地としてのaMEMDMEMの比較はできないと思われる。それからaMEMにはglutamineも入っていますから増殖にはかなり有利ではないでしょうか。歯根膜幹細胞の培養条件の最適化が行われたとは、ちょっと考えられない。LonzaMSCGMを使うとか、b-FGFを添加するなど幹細胞培養のための工夫は様々ある。血清のlotも重要だ。