Wntの減少は歯根吸収を招く

Downregulation of Wnt causes root resorption

Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2014 Sep;146(3):337-45.

Lim et al., Seoul National University, Seoul, Korea.

 

背景:歯根の外部吸収については多くの原因があるが、病的状態が無い状態では矯正治療において過剰な外力が用いられた場合に最も良く観察される。しかし機械的な刺激がなかったとしても、歯根吸収は起こることがある。本研究の目的は、Wntシグナリングが病的な歯根吸収において役割を果たしているのかどうかについて、Wntless(Wls)を象牙芽細胞と骨芽細胞で特異的に欠損させ、歯根表面の形態維持を計測することで検討した。方法:10匹(1か月齢)および20匹(3カ月齢)のOCN-Cre; Wlsfl/fl マウスおよび野生型マウスについて、マイクロCT、組織標本、免疫組織染色を用いて評価した。歯槽骨、象牙質、セメント質の表現型における変化を観察し計測した。結果:Wntシグナルが減少した遺伝子改変モデルでは、RANKLの発現が増強しており、オステオプロテジェリンの発現は減少していた。この分子の崩壊は破骨細胞の活性上昇、骨芽細胞の活性減少、そして広範かつ自然発症的な歯根吸収を誘導した。Wntシグナルが増強する遺伝子改変マウスでは厚いセメント質が見られ、一方OCN-Cre; Wlsfl/flマウスでは、周産期においても薄いセメント質が観察された。結論:結果をまとめると、Wntsはセメント質の恒常性維持を制御しており、原因不明の歯根吸収は内因性のWntシグナルの減少がその原因かもしれない。

 

Wntをゴルジから細胞表面へ輸送する分子シャペロンであるWntless(Wls)を骨芽細胞、象牙芽細胞で特異的にdeleteしてWntを抑制したマウスにおいて歯根吸収が自然に発生見られたとする論文。まずWntをOCN発現細胞で抑制すると骨が少なく、セメントも薄くなるという結果は他の報告と一致する。歯根吸収についてはセメントの薄さが原因の一つ。1カ月齢から3カ月齢で吸収は大きくなる。興味深いのは骨芽細胞で低くなったWNTによって歯根膜のOPGが下がり、根表面に破骨細胞が現れるということ。論文では骨芽細胞のみだと示しているが、過去の報告などを見てもセメント質でもOCNは発現しているのではないか?セメント質はターンオーバーしないらしいが、OPGが歯根膜でさがると破骨細胞が現れるのはなぜか?RANKLトランスジェニックマウスではやはり根吸収が起こるらしい。StanfordのHelmsのラボからの仕事から色々学ぶ。